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医療法人 社団 玄同会 小畠病院 副甲状腺の病気
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副甲状腺の病気
  担当医の解説(内分泌外科)


副甲状腺の病気について

小畠病院 診療部長 外科(甲状腺・副甲状腺・肛門)担当
片桐誠 医師 
(内分泌・甲状腺外科専門医)

 副甲状腺とは

副甲状腺って何かご存じですか?甲状腺は知っている方が多いのですが、副甲状腺となると聞いたこともない方がほとんどではないでしょうか?実は生命の維持になくてはならない大切な臓器で、最近話題の骨粗鬆症にも関係しています。今回は副甲状腺とその病気について説明します。

副甲状腺は副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone, PTH)を分泌する臓器で、大きさは米粒大、通常は甲状腺の裏側に4個がへばりつくように存在します(図1)。あまりに小さいので副甲状腺が発見されたのは19世紀の中頃と言われています。甲状腺に隣接している小さな臓器ですので副甲状腺と名付けられましたが、甲状腺とは別の立派な独立組織です。

山椒は小粒でピリリと辛い、と言われるように、この副甲状腺が分泌するPTHも生体の中でとても大切な役割を果たしています。その役割とは血液中のカルシウム濃度を高めるという作用です。

海水中には多量のカルシウムが溶けているため、魚類の体内にはカルシウムがどんどん入ってきます。そうすると体中のカルシウムが多すぎてしまうので魚類には、血液中のカルシウム濃度を下げるカルシトニンというホルモンを分泌する組織が発達しています。進化の過程で生物が水中から地上に上がると一気にカルシウム不足になりました。カルシウムは飲み物や食べ物から取り入れるしかありません。そこで貴重なカルシウムを体内に蓄え、血液中のカルシウム濃度を保つために副甲状腺が発達したのだそうです。それ故、魚類には副甲状腺は存在しません。このように副甲状腺は生物の進化の過程において比較的新しく発生した臓器と言うことになり、ちょっと驚く話です。

血液中のカルシウム濃度が下がると、副甲状腺から速やかにPTHが分泌されます。PTHは骨を溶かし(骨吸収)、腎臓でカルシウムが尿中に排泄されるのを防ぎ、ビタミンD3の活性化を高めてカルシウムの腸管からの吸収を高めます。その結果、血液中のカルシウム濃度は正常値まで上昇し、PTHの分泌は抑えられます。このような作用で血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれるのです。PTHはビタミンD3、カルシトニン(人では甲状腺の傍濾胞細胞と呼ばれる細胞から分泌されます)とともに骨・カルシウム代謝に関与する重要なホルモンです。
  (図1)副甲状腺模式図(黄部の4個)


 副甲状腺の代表的な病気

(1)副甲状腺機能亢進症
副甲状腺の病気の代表的なものは、PTHの分泌が過剰となる副甲状腺機能亢進症です。この副甲状腺機能亢進症には原発性副甲状腺機能亢進症と二次性副甲状腺機能亢進症に大別されます。

原発性副甲状腺機能亢進症は副甲状腺癌、副甲状腺腺腫および副甲状腺過形成が原因となります。多くの方が腎結石や尿管結石などの尿路結石から発見されます。何故血中のPTHが高いと尿路結石ができるかというと、PTHの作用で血中のカルシウム濃度が高まるとカルシウムはどんどん尿中に排泄されます。一方、PTHは尿中のリンの濃度を高めます。そうすると尿の中にカルシウムとリンが沢山排泄されリン酸カルシウムという水に溶けない結晶が生じ、これが腎や尿管に貯まり結石となります。このような病態は結石型と呼ばれ、尿路結石を繰り返している患者さんは血液中のカルシウム濃度とPTH濃度を測定する必要があります(図2)。このため多くの患者さんが泌尿器科の医師から治療を依頼されます。

現在では稀になりましたが、骨や関節が痛いなどの骨症状で発見されることもあります。前章でも述べましたが、PTHには骨を溶かし(骨吸収)、血中にカルシウムを放出します。この骨を溶かす作用が前面に現れ、骨の量(骨密度)が減少し、骨の微細構築が破壊され、場合によっては骨の中にのう胞が生じ骨折してしまうこともあります(図3)。このような病態は骨型と呼ばれていますが、治療を行うと劇的に良くなります。

また、まったく自覚症状はない方が健康診断を受け、たまたま血液中のカルシウム濃度が高いことが判り、精密検査で原発性副甲状腺機能亢進症と診断される場合があります。勿論、尿路結石も骨の変化もありません。このような病態は化学型と呼ばれ、経過観察のみで治療が行われないこともあります。但し高カルシウム血症が長く続くと心臓の刺激伝導系に悪影響を与えます。また、次第に骨量が減少して骨粗鬆症が早く発現することもあります。ですから若くて元気な方には症状が全くなくとも治療をお勧めしています。

慢性腎不全のため透析治療を受けている方の中に副甲状腺機能亢進症が発症することがあります。これは二次性副甲状腺機能亢進症、あるいは、腎性副甲状腺機能亢進症と呼ばれます。原因は複雑ですが、血中のリンが上昇し、体内のビタミンD3が欠乏するために血中のカルシウム濃度が低下し、その結果副甲状腺からPTHが分泌されます。ビタミンD3やカルシウム剤により予防的治療がされますが、長期間PTHの過剰分泌が持続する内に副甲状腺に過形成という変化が生じ、大きく腫れてきます。

病気が進行すると、薬で治療してもPTHの過剰分泌を抑えられなくなり、血中のカルシウム濃度が高くなることもあります。骨や関節が痛くなり、全身の痒みや異所性石灰化が生ずるようになります。骨が溶け出すことで骨折なども生じやすくなり、脊椎の圧迫骨折で身長が短縮する方も多く見られます(図4)。内科的治療の限界が来た場合は手術をすることも多く、その場合は副甲状腺を全て切除して、その一部を前腕の筋肉内に埋め戻します(自家移植)。手術後は骨痛や全身の痒みは速やかに消失し、溶けた骨も次第に回復します。

     (図3)               (図4)               (図5)

  
(2)副甲状腺機能低下症
副甲状腺機能低下症のほとんどは、頸部の手術で副甲状腺がすべて切除された場合に生じます。一般的には甲状腺切除術の後に生ずることが多く、甲状腺と一緒に切除されてしまったり、栄養血管の血流が途絶えることでPTHの分泌が低下します。

副甲状腺機能低下症になると、血液中のカルシウム濃度が下って手や唇の周りがビリビリとしびれ、手の指が突っ張ってしまうようになります。この状態をテタニーと言いますが、カルシウム濃度が低下することによって1本1本の筋線維が収縮すること(攣縮と言います)により生じます(図5)。食物中のカルシウムでは補いきれないのでビタミンD3やカルシウム剤を服用していただきます。

甲状腺の手術に際しては副甲状腺機能低下症にならないように、甲状腺に付着して合併切除された副甲状腺を筋肉内に自家移植したり、副甲状腺に行く血管を温存するなど細心の注意を要します。

(図5)

(3)副甲状腺のう腫
副甲状腺に生ずる病気の一つに副甲状腺のう腫があります。これは副甲状腺の中に透明な液体が貯留し、段々大きくなる病気で、多くがCTや超音波検査で発見されます。時に腫瘤として触れることもありますが、診断は容易で、手術の必要もありません。

 副甲状腺疾患の診断と治療

副甲状腺機能亢進症があるかどうかは、血中の副甲状腺ホルモン濃度とカルシウム濃度を測定すれば比較的容易に判ります。副甲状腺機能亢進症の治療はPTHを異常分泌している副甲状腺を切除すればよいのですが、どの副甲状腺がPTHを異常に分泌しているかを診断しなくてはなりません。

PTHを過剰に分泌している副甲状腺は通常は腫大してきます。ですから大きくなった副甲状腺を探せばよいことになります。先に副甲状腺は通常4個あると述べましたが、時に5個あったり、6個あったりします。私の経験で最も沢山あった方は7個でした。これらの副甲状腺の内1個だけが腫れることもありますし、すべてが腫れることもあります。また、解剖学的に決まった位置にあるわけではなく、甲状腺の中程にあったり、縦隔と称される胸の中にあったり、食道の横にあったり、とても変化に富んでいます。

正常の大きさの副甲状腺はどんな検査をしても見ることはできませんが、副甲状腺が腫大してくると超音波検査やCT検査でその位置を確かめることができます。副甲状腺の局在診断には通常超音波検査、CT検査、アイソトープを用いた核医学検査、MRI検査などが有用で、時に大腿静脈よりカテーテルを挿入して左右の内頸静脈から採血し、PTH濃度を調べる必要もあります。図6は核医学検査で縦隔内の副甲状腺に99mTc-MIBIというアイソトープが集積した症例です。

以上の検査で腫大した副甲状腺が判明した場合は、その副甲状腺を切除すればよいのですが、透析患者さんによく生ずる二次性副甲状腺機能亢進症の場合は少し異なります。この場合、副甲状腺は総て腫れてきますので全部を切除しなくてはなりませんが、副甲状腺が全くなくなると骨が回復しませんので、切除した副甲状腺の一部を前腕の筋肉内に埋め戻す(自家移植)必要があります。

手術により血中カルシウム濃度が正常になると、便秘が治ったり、いらいらしていた気分が直ったり、頭の中が晴れ渡ったように爽やかになった、などの患者さん自身が術前に気づいていなかった様々な症状が解消されます。
(図6


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