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医療法人 社団 玄同会 小畠病院 前立腺癌 診断と治療
広島県福山市駅家町上山守203
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小畠病院 診療科目
担当医による解説
前立腺癌
  担当医の解説(泌尿器科)


前立腺癌の診断と治療について

小畠病院 副院長 泌尿器科担当
安川明廣 医師
(日本泌尿器学会指導医・専門医)

 まとめに代えて

この10年間で前立腺癌の診断は大きく様変わりしました。PSAと呼ばれる前立腺癌の腫瘍マーカー検査によるスクリーニングが可能になったこと。経直腸エコーの診断精度の向上、およびエコー下での系統的針生検です。

私たちは直腸指診、あるいはPSAで前立腺癌が疑われる方には、できるだけ早期に前立腺生検を行うことを薦めています。

前立腺癌が心配な方、あるいは健康診断などでPSAが少し高いといわれて、どうしたらよいか困っている方がいらっしゃいましたら小畠病院泌尿器科外来を受診してみてください。担当医が適切なアドバイスをいたします。

 はじめに 

前立腺癌は世界的に罹患率の高い癌であり男性の癌の約10%を占めるといわれています。一般的には欧米人に多くアジア人には比較的少ない癌と考えられていましたが、生活慣習の欧米化にともない日本でも増加傾向の著しい癌のひとつとなっています。政財界、芸能界の著名人のなかにも前立腺癌を患っている方もおり、前立腺癌についての様々な情報がマスコミの報道などを通じて皆さんのもとに送られる機会が増えていると思われます。

小畠病院泌尿器科の私たちは、以前より前立腺癌の早期発見、個々の患者さんに適した治療法を選択する努力をしてまいりました。最近、外来を通じても前立腺癌についてのお問い合わせが多く、この病気に対する意識が高くなっていることがうかがえます。前立腺癌についてよりよく知っていただくため、前立腺癌の診断・治療についてお話することにしました。

 前立腺と前立腺癌の症状

1)前立腺の位置と働き
前立腺は膀胱の出口に位置し、中心部を尿道が通っています。前立腺の働きは精液の一部を産生することであり、生殖器のひとつとしてなくてはならない器官です。
「前立腺肥大症」は尿道周囲の内腺が大きくなって尿道をふさいでしまうために起こります。一方、前立腺癌は内腺の外側にある外腺から発生することが多く、前立腺肥大症が癌に変化するようなことはないと考えられています。

2)前立腺癌の症状
一般的に前立腺癌は、多くがいわゆる外腺(前立腺の外側)から生じるため、早期には臨床症状をともなわないのが普通です。

前立腺癌と診断される患者さんの代表的な訴え、排尿困難(おしっこが出にくい)、頻尿(おしっこの回数が多い)などはむしろ並存する前立腺肥大症の症状であることが多いのです。しかし前立腺癌が局所で進行した場合、このような症状が出現することがあります。

さらに前立腺癌が進行した場合には、他の癌と同様転移が出現しますが、骨への転移が多いことが特徴です。腰痛などが典型的な症状であり、高齢者の腰痛の原因を詳しく調べた結果、前立腺癌が見つかることもあるのです。

 前立腺癌の診断

この10年間で前立腺癌の診断は大きく様変わりしました。以下の2つが大きな変化です。
  1. PSAと呼ばれる前立腺癌の腫瘍マーカー検査によるスクリーニング(後で詳しく説明します)
  2. 経直腸エコーの診断精度の向上およびエコー下での系統的針生検の普及
1)前立腺生検について
私たちは直腸指診、あるいはPSAで前立腺癌が疑われる方には、できるだけ早期に前立腺生検を行うことを薦めています。

PSAの値が4(ng/ml)以上の場合には癌についての詳しい検査が必要であると考えられていますが、できるだけ無駄な生検を行わなくてすむように、年齢、PSAの上昇の程度、前立腺の大きさなど様々な因子から患者さんを選択して前立腺生検を行うように心がけています。一般的にはPSAが4−10では約20%、10−20では40%程度、PSAが20以上では50%−70%の患者さんに前立腺癌が見つかるとされています。

実際の前立腺生検は、エコーによる検査時間も含めて30分程度です。合併症としては、血尿(おしっこに血が混じる)、便に血が混じる等がありますが、ほとんどの場合3、4日で軽快します。最も問題となる合併症は生検によって急性前立腺炎を生じ高熱が出ることです。前立腺生検を行う場合、当院では安全性を考慮して2〜3日の入院をしていただきます。

前立腺癌が心配な方、あるいはすでに健康診断などでPSAが少し高いといわれて、どうしたらよいか困っているような方がいらっしゃいましたら小畠病院泌尿器科外来を受診してみてください。担当医が適切なアドバイスをいたします。

2)病期分類と癌の悪性度
前立腺癌と診断された患者さんは次に病変の広がりを調べます。これを病期といいますが、大まかには病期Aから病期Dに分類されます。
  • 病期A:前立腺肥大症として治療された中から癌が“偶然に見つかった”場合
  • 病期B:癌が前立腺内にとどまり、外に“はみだしていない”場合
  • 病期C:癌が前立腺から少しだけ“はみ出している”が転移がない場合
  • 病期D:リンパ節や骨などに転移がある場合
癌のもうひとつの分類に“悪性度”というものがあります。一口に“癌”といっても非常におとなしいものから、凶悪で小さくてもどんどん転移をきたすようなものまで多様です。これらを分類するため、高分化癌(おとなしい癌)から低分化癌(どんどん大きくなって転移しやすい癌)まで、高・中・低の3段階で分類します。専門的には“グリソンスコア”と呼ばれる点数をつけて、2から10まで9段階で分類することもあります。

 PSAスクリーニングについて

前立腺癌検診におけるPSA(前立腺癌の腫瘍マーカー検査)の有用性についてお話します。

PSAを用いた検診の死亡率減少効果に関する信頼性の高い研究としては、オーストリアのチロル地方のスクリーニングデーターがあります。チロル地方では、1993年より45〜75歳の住民に対し無料でのPSA測定を提供し、その後5年間の間に対象住民の2/3以上が少なくとも一回以上のPSA測定を受けました。その結果、1998年の実際の前立腺癌死亡者数は予測値に比べ42%も低下し、チロル地方以外のオーストリア国内の前立腺癌死亡率に比べても優位に低くなりました。さらに2005年時点の実際の死亡率は予測値に対して54%も低下していました。

また、前立腺癌スクリーニングの有効性に関する無作為対象比較試験(RCT)については、大規模な研究が米国のProstate,Lung,Colorectal,and Ovarian(PLCO)Cancer Screening研究、ヨーロッパでのEuropean Randomized Study of Screening for Pristate Cancer(ERSPC)が進行中です。

最近、スウェーデンでの中間解析でスクリーニング群に無作為に振り分けられた9,972人の中で7,516人が実際にPSA値検診を受診し、10年間で810人の前立腺癌が発見されました。また、コントロール群は9,973人が振り分けられ、同じ期間に442人の前立腺癌が発見されています。転移癌とPSA値が100ng/ml以上の癌を進行癌と定義した場合、スクリーニング群は24人であったのに対し、コントロール群では47人もの進行性前立腺癌症例が発見されました。

PSAスクリーニングの導入により10年間で進行癌罹患数が49%も減少したことになり、進行癌の生命予後は非進行癌と比較し明らかに悪い事からPSAスクリーニングの有用性を証明する重要な研究結果と言えます。

PSA検査出現以前には前立腺癌の約半数はすでに骨に転移した状態で発見されており、治療法は限られ骨転移症例の約半数の症例は5年以内に死亡していました。日本で将来増加し続けると予測されている前立腺癌死亡率が欧米諸国のように低下に転じるためには、適切なPSAスクリーニングシステムの普及が欠かせません。

 前立腺癌の治療について

前述したPSAの出現によって前立腺癌の診断法は格段の進歩を遂げ、発見される前立腺癌の臨床病理学的特徴は一変し、それに伴い治療の方向性は大きく変わりました。

1)外科治療
現在、主に行なわれているのは恥骨後式前立腺全摘除術、会陰式前立腺全摘除術、腹腔鏡下式前立腺全摘除術です。

2)放射線療法
  1. 外照射:通常のリニアック、三次元原体照射(3D-CRT)、強度変調放射線治療(IMRT)のほかにも粒子線(陽子、重粒子)治療があります。
  2. 組織内照射:I125シード線源を用いた密封小線源治療とIr192による高線量組織内照射がある。I125シード線源を用いた密封小線源治療は2003年3月に本邦において認可され、現在約60施設で治療が行なわれています。
3)内分泌治療
外科的(精巣摘除)または薬物的(LH-RHアゴニスト)去勢によるアンドロゲン遮断療法とこれに抗アンドロゲン剤を併用したMAB療法があります。

4)待機療法
待機療法には2次治療として内分泌治療を想定した待機遅延内分泌療法と、放射線治療や手術療法などの根治療法を2次治療として考えるPSA監視療法とがあります。生検の結果、限局性前立腺癌と診断され、なおかつ小さい病巣で高分化癌の場合に、PSA doubling timeに基づき待機療法を行なうことの有用性と安全性についてのprospective studyが当科でも進行中です。


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